僕は、栃木県に住んでる32才、男性。ある会社の営業職に就いていました。
お客様のハートを掴み、そこそこの営業成績を上げていました。
しかし、ここ何年も掴めていなかったのが、同世代の女性。
仕事は充実していましたが、プライベートは寂しい思いをしていました。
ある日、目にしたweb広告。それは、大手企業が運営する出会い系サイトだった。
僕は、軽い気持ちで、登録することにしてみました。
けど、結果は予想以上の空振りの日々が一ヵ月続いた。
もう辞めようかと思った頃、一人の女性からメッセージが届いた。
プロフィールを見てみると、30才。写真は載せていなかったが、職業は保育士。
僕は飛びつくように、その方へメッセージを送った。
彼女は、同じ市内に住んでおり、それほど離れているわけでなかった。
お互い好きなミスチルの話で、意気投合していた。
少しずつ心の距離も近づいていると思っていた。
メッセージ交換を彼女と始めてから2週間。
届いたメッセージを開いてみると、僕は青ざめた。
すぐさま、メッセージを送り返した。
『もう、やりとりを止めて、別れたい』
たった1行。一方的に送られたメッセージ。
昨日までは、平然と続いていたやりとりだっただけに、ショックだった。
僕は、彼女にその訳を聞いてみた。
けど、返事は返ってくることは、無かった。
僕はもう一度、送ってみたが、それもリアクションがなかった。
彼女の気持ちを察し、身を引くことにした。
それから3日。突然、返信が返ってきた。
『ごめんなさい』
その後に彼女の思いが綴られていました。
『私は、あなたのことをすごく素敵な男性だと思いました』
そして、続けてこう書かれていました。
『ただ、このまま好きになってしまっていいものか、悩んでしまいました』
突然、返信が来なくなってしまった理由が分かった。
別れたい彼女の気持ちを押し切り、返信を返した。
『絶対、幸せにするから大丈夫だよ』
その日は、返ってこなかった。
僕は、そんなことを送って、すごく反省した。
まだ顔も見ず、ただメッセージをやりとりしているだけの相手に、『絶対』なんていってしまったことに。
余計に彼女を不安にさせてしまったことに、気付いてしまったからだった。
次の日、この日は仕事が難航して、疲れ果てて一人暮らしのアパートに帰ってきた。
夕食も食べずに、このまま寝てしまいたいくらいだった。
どうせ、返信なんてないだろうと、メッセージを確認した。
すると、彼女から返ってきていた。
思わずベッドの上で倒れていた体を起こして、スマホの画面にかじり付いた。
『あなたの気持ちは、とても嬉しかった』
彼女を怒らせていないことが分かり、安心感からすこし涙ぐんだ。
『でも、会ったらあなたの気持ちが変わると思う』
そう綴られていたのだった。
確かに、お互いによく知らない存在。不安にはなってしまう。
それは彼女も同じことだろう。
僕はダメ元で、会うことを提案してみた。
このまま続けても、答えが出ないまま、終わってしまうような気がしたからだった。
すぐさま、メッセージを送った。
疲れからは、返信をずっと待ちながら寝落ちしてしまった。
翌朝、メッセージを確認してみたが、返信は無し。
急いで身支度をし、仕事へ向かった。
だが一日中、ふと彼女のことで頭がいっぱいだった。
仕事を終えて、メッセージを確認すると返信があった。
『一度だけなら会ってもいい』
僕は跳ね飛びたくなる、そんな気持ちだった。
二人の予定があった、日曜日。
駅の改札口前で、予定よりも30分早く待ち構えていた。
行き交う人々を見ながら、どんな人が現れるか、期待と不安に満ちていた。
僕に近づく、一人の女性。
そして、僕の名前を言い始めた。
ピンクのスカートの女性、まさしくメッセージをくれた彼女だった。
事前に予約しておいた、レストランに入り、窓際の席に座った。
ストレートで艶もあり、綺麗なロングヘア。
顔も悪くない、外見は申し分なかった。
注文が終わるとしばらく、沈黙が続いてしまった。
メッセージでは、あんなに盛り上がったのに。
やはり、ここは僕から話しかけた。
しかし、言葉は発してくれるものの、短めに返すばかりだった。
やっぱり、先日から雰囲気がよくなかったから、気にしているのだろうか。
不安でしかなかった。
状況を打破できる道筋も立てられず、用意していた話題も尽きた。
再び、沈黙が続いてしまった。
彼女も店に入ってから、ずっと顔を下に向けたままだった。
「ごめんなさい」
急に、話し始めたかと思えば、謝罪の言葉だった。
「私といても、楽しくないですよね」
「そんなことないですよ」
僕は、彼女がそんなことを考えていたと思わなかった。
「私、女ばっかりの職場で、同世代の男性とお話しすることがなくって、どうしてあげたらいいかわからなくて……」
おどおどと不安そうに彼女は語ってくれた。
「それに私、かわいくないし……」
「そんなこと無いですよ。十分かわいいですよ」
彼女が、はにかむ様子は余計かわいかった。
緊張も少しずつほぐれていったが、時間が過ぎるのは早かった。
レストランの出口で解散することにした。
「また、今度ゆっくり食事に行きましょうよ」
彼女は、にこやかにほほえんだ。
これが、僕と嫁さんの初デートになった。